胃がんは男性での生涯罹患確立が最も高く10.9%、生涯累積死亡率は肺がん6.3%に次いで2位の4.1%となっています。女性では生涯累積罹患率が大腸がん7%、、乳がん6%に次いで3位の5.5%となっています。女性の生涯累積死亡率は大腸がん2.3%、肺がん2.1%に次いで3位の2.0%となっています。 胃がんのリスク要因として確実なものはヘリコバクターピロリと喫煙です。リスク要因として最も重要なものはピロリ菌です。喫煙によって胃がんリスクは1.6倍程度に上昇します。食塩の関与も可能性が高いといわれています。予防には野菜(非でんぷん野菜、ネギ、ニンニク、タマネギなど)の可能性が高いといわれています。果物や緑茶の予防効果も可能性が言われています。 ピロリ菌についての説明は別項にありますので、ご参考にして頂ければと思います。 ここから先は胃がんの進行度や治療について説明させて頂きます。少し難しくなりますので、まずは簡単にイメージをもつための説明をさせて頂きます。 基本的には、胃の表層にある粘膜からガンが発育します。粘膜にはリンパ管や血管が目立ちません。がんが大きくなると粘膜の下に入り込んでいきます。すると、粘膜のさらに下にあるリンパ管や血管を侵します。その後、胃の外にあるリンパ節や肝臓・肺・脳などにがん細胞が飛んでいきます。胃がんが粘膜に留まっている場合には、リンパ節転移等が起こりにくく、高率に治癒が期待できます。 また、分化度というものもあり、これは元の胃にどれだけ近い形でがん細胞が存在しているかということです。元の胃に近い形を高分化、元の胃の形態を全く保てていないものを未分化といいます。高分化なものほど悪性度が低く予後が期待できます。次いで中分化→低分化→未分化とがん細胞の形態が崩れていきます。未分化なものは増殖・転移が早く、悪性度が高く、予後が厳しくなります。 つまり、がん細胞が胃粘膜表層に存在し、高分化であれば内視鏡切除や外科切除で治癒が期待できます。未分化なものでも、がん細胞が胃粘膜表面に留まっていてリンパ節が腫れていなければ切除によって治癒切除がそれなりに期待できますが、リンパ節が腫れているものは治癒切除の確立が低下します。 私たちはこのような要素を組み合わせて考え、患者さんに最も適切な治療法を提示しています。 これ以降はもう少し詳しく書きます。 胃は表面から粘膜層、粘膜筋板、粘膜下層、固有筋層、漿膜で構成されています。胃がんの多くは粘膜層から発生する上皮性腫瘍です。粘膜層に留まっているがんを切除すれば、5年生存率は99%、粘膜下層で留まっているがんの5年生存率は96%となっております。これまでの報告で、がん細胞が粘膜下層の浅い位置(500μm以下)で留まっていれば、リンパ節転移の確立は低く、内視鏡で切除できる事が分かっています。ただし、先ほど説明した未分化がん、潰瘍を伴うタイプ、がんが大きすぎる場合などは内視鏡で切除しても、取りきれない場合もあり、外科医・御家族との十分な連携が必要となってきます。 内視鏡による切除は、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)と言います。まず、腫瘍の周囲にヒアルロン酸などの液体を注入し、腫瘍を盛り上げます。次いで、胃カメラの先端からナイフを出し、腫瘍の下から剥いでいきます。当然、胃粘膜を剥いでいくわけですから、出血したり、胃に穴が開く(穿孔)ことも起こりえます。腫瘍の大きさや場所などによって危険性は変わりますが、穿孔は4%程度で起きます。ただし、小さい穿孔であれば、手術中にクリップで縫縮すれば大抵は軽快します。出血も激しく出るものは稀で、内視鏡を用いた止血で治療できることがほとんどです。 手術後は切除した腫瘍が取りきれているのか、リンパ管や血管に侵襲していないか等を顕微鏡で確認します(病理と言います)。取りきれていない場合は外科切除でより広範囲に追加切除することを検討します。 無事に切除できていれば再発がないか、定期的な内視鏡検査・超音波検査・CT検査を行い経過をみていきます。 注意しなければいけないことは、胃がんは多発するということです。1箇所治療できても、残りの胃粘膜にがんが発生することがあります(約3%)。また、食道や咽喉等にもがんを発見することがあります。 いずれにせよ、ひとりひとりの状況によって治療法は違います。 外科切除、抗がん剤、他の特殊な治療法についても、直接お問い合わせ頂ければ、図や写真などを用いて詳しく説明させて頂きます。

下図は早期胃がんの写真です。粘膜内に留まっている高分化がんです。内視鏡的に治癒切除し、外来で経過をみています。

早期胃がん

早期胃がん