ピロリ菌(Helicobacter pylori)

 ピロリ菌除菌治療の適応疾患と、ピロリ菌除菌療法の処方 についてはこちら。

胃がんは、がんのなかでも日本人に最も多く、患者数は約21万人とされ、年間約5万人が亡くなります。胃がんは、がんの死因では2位となっています。胃がんの予防にピロリ菌の除菌を行うことが薦められています。 ピロリ菌は胃に生息する細菌で、胃がん、胃・十二指腸潰瘍、MALT リンパ腫等の発症に関与します。日本人の約半数が感染しています。 主な感染源は井戸水、食事中の唾液感染(両親とお箸や皿を共有すること)と考えられています。 胃の中は酸で満たされており、とても細菌が生息できる環境ではないのですが、ピロリ菌はウレアーゼという酵素を持っており、この酵素が尿素からアンモニアを生成し、アンモニアによって胃酸を中和するため生息できることが分かっています。ピロリ菌の感染で胃粘膜が徐々に荒れていき(胃炎)、齢を重ねたように薄く白い粘膜になります(萎縮といいます)。ピロリ菌感染→胃炎→萎縮性胃炎→腸上皮化生→胃癌がん発症という順序になります。 また、最近では市町村の胃がんリスク検診でもピロリ菌の検査を行うことが多くなっています。胃がんリスク検診では血液検査でピロリ菌を調べますが、その他にも内視鏡検査で粘膜を採って調べる方法、胃内視鏡検査をせずに尿・呼気・便で調べる方法もあります。いずれも精度は高くなっており、患者さんに適した検査法を用いています。 ピロリ菌の除菌には胃薬(プロトンポンプ阻害薬)と抗生物質(マクロライド系、ペニシリン系)を2種類、朝夕食後に1週間内服するだけです。服用終了後から約1ヶ月後以降に除菌療法の効果の判定を行うこともありますが、2か月以上経ってからの方が精度が高くなるので除菌後は慌てずに効果判定をするのがよいと思います。1度目の除菌率は70~90%となっています。1度目治療でうまくいかなかった場合は、抗生剤の1種類を変更(マクロライド系→メトロニダゾール)して再度除菌療法を行います。2度目の除菌療法中に飲酒すると、酔いが早くまわってしまうので禁酒してください。これで90%以上の方で除菌が可能となっています。2度目の治療でも失敗される方が2-3%います。3度目の除菌療法は保険適応となっておらず、自費扱いとなります。胃薬(プロトンポンプ阻害薬)と抗生物質(マクロライド系、ニューキノロン系)、4倍量の胃薬(プロトンポンプ阻害薬)と抗生物質(ペニシリン系)など様々なレジメが報告されていますが、主治医と相談し治療法を決めることとなります。 除菌療法の副作用ですが、軟便・下痢、口内炎、味覚異常が約10%の人にみられます。多くの場合は症状が軽いので治療を継続します。これらの副作用は治療終了後、速やかに消失します。発疹、発熱など、症状がひどい場合は医師との相談が必要になります。 ピロリ除菌療法でどの程度胃がんの発生率を低下させられるかは様々な報告があります。ピロリ菌の感染者をたくさん集め、除菌群と除菌しない郡に分けて研究を行うには膨大な時間と労力がかかりますし、倫理的に除菌しない群に分けられた方には問題が残ります。ある日本の報告では約2800名を8年間、追跡した研究からピロリ菌感染者からは36名(2.9%)の胃がん患者が発生したが、ピロリ菌非感染からは1例も発生しなかったとされています。早期胃がん治療後の方々にピロリ除菌を行うと胃がんの再発が抑制されたという報告(早期の胃がんを発症した人を胃カメラ下で胃がん部位を完全に切除した後にも胃内の他の部位に2年間で約5%の人に早期胃がんが発症することが知られています。この試験の結果、3年後の胃内の他の部位のがんの発生は3分の1まで低下することが明らかにされ、60歳位で早期の胃がんを発症した人であっても除菌することによって胃がんの発生が抑制されることが明らかにされています)をもって、ピロリ菌の除菌による胃がん発症抑制は確実とされています。 除菌成功後に逆流性食道炎が生じたり、増悪する方が10%前後いるという報告もあります。また、除菌成功後に肥満やコレステロール上昇など、生活習慣病の出現がみられることもあります。 いずれにしろ、20-30代の早期でピロリ菌を除去して、萎縮しない胃粘膜を保つことが胃がん予防には有効です。また、高齢でピロリ菌を除菌された方は萎縮した胃粘膜が残っており、そのような粘膜からの胃がん発症の可能性は残念ながら残ります。いずれにしろ定期的な内視鏡検査で早期の段階で胃がんを発見することが重要となります。 稀にピロリ菌の感染していない方からも胃がんは発症しますので、やはり定期的な内視鏡検査の重要性は変わりません。 早期の胃がんは治ります。 最後に、ピロリ菌除菌治療の適応疾患と、ピロリ菌除菌療法の処方をまとめました。ピロリ菌は胃がんだけでなく、様々な疾患との関連性があり、除菌することで原疾患を治すことも出来ます。 下図は胃潰瘍の写真です。
胃潰瘍の写真

胃潰瘍の写真