今日は難病と言われるギランバレー症候群に遭遇した経験について書きます。国の難病にも指定されている病気であり、10万人に1人が発病すると言われています。芸能人の大原麗子さんが罹病していた事で一躍注目を浴びました。 神経の領域となり、私の専門外となりますが、私はここ10年間で2人ほど診断させて頂きました。直近での経験を書かせて頂きます。 10日ほど前に下痢を訴えて受診された中高年の方でしたが、お腹の調子はよくなったが、5日前から全身の力が入らなくなってきたという訴えでした。左右対称に力が入らず、壁につかまりながらようやく歩ける状態でした。腱反射(かっけの膝をポンと叩く検査)が左右ともに減弱しており、眼球運動障害や手足のしびれなどはありませんでした。この時点でで大まかに病気の推測ができました。 念のため、まずは怖い病気でないことを確認します。救急の現場では念のためが大切なので、MRIで脳と首の病気をチェックします。MRIの待ち時間も考えて、血液検査も提出しました。どちらの検査も問題なく、ギランバレー症候群を強く疑い、神経専門の先生へ紹介させて頂きました。神経内科の先生とも診断は一致しました。その後、患者さんの症状は一時悪化しましたが、グロブリン療法を中心に集中治療が開始されました。幸い、後遺症なく改善し、退院されました。 ギランバレー症候群の詳細については割愛させて頂きますが、厄介なのは診断となります。患者さんはどの先生に診てもらうのが適切か分かりませんし、私達でもその判断が難しい事も頻繁に経験します。どの先生が最初に診るかは現場の判断となります。 今回、私がどのように考えて患者さんを診察したのかを書いてみます。御参考になる方がいらっしゃれば幸いです。 ギランバレー症候群の患者さんは身体に力が入らないという訴えで病院にいらっしゃいます。このような時、診察室に入る時点で左右一方に力が入らないのか、両方に力が入らないのかを 私は診ています。左右一方ならば、脳疾患(脳梗塞、脳出血)や頚部疾患等を第一に疑いますし、これらは緊急性も高く見逃してはいけません(神経は左右それぞれに存在し、通常は片一方だけが障害されます)。MRI検査を始めとした検査を行って頂きます。 左右両方の脱力というのは稀です。この場合、身体の内側から病気が始まって筋肉や神経が左右同時に障害され始めたと考えられます。この時点で考えられるのは①低カリウム血症に伴う周期性四肢麻痺、②皮膚筋炎、③ギランバレー症候群、④筋萎縮性硬化症、⑤筋ジストロフィー、⑥熱中症などになります。①は血液検査ですぐに分かりますし、背景に甲状腺機能異常が存在しないかどうかも調べます。②も血液検査で疑うことは容易です。⑥も話を聞けばすぐに分かります。 ③④⑤は非常に稀な病気ですが、ポイントは左右対称に障害が出現して、日に日に進行していきます。そして、腱反射(かっけの膝をポンと叩く検査)が弱くなります。他には眼球運動障害や感覚障害も徐々に出現してきますが、この段階で疾患の絞り込みが出来て、専門の先生へ紹介出来ます。これ以上の時間を私のところで費やすことは今回の患者さんにとって望ましいことではないと思っています。 私の専門外の疾患でしたが、患者さんが不幸な転機を辿らずに安堵しました。 御要望があれば消化器以外の疾患情報も提供したいと思いますので、御連絡下さい。